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あのコンサートから1年が経った。

僕は新しい何かを求めてたけど、まさかのアベックに成功して町に戻った。

“アベックしてよ” まさかのラブストーリーは突然始まった。

 

これからどうするの?

どうするって街に帰るさ。

君はどうするの?

わたしは分かんない、そのうちね。

 

家に戻ると、母が“どう?たのしかった?”って聞いてくれた。“まあ、こんなに汚して、早く脱いで、それからシャワーね”5歳のころから変わらないこのセリフ。たしかにピケのジャケットもパンツもずいぶん汚れていた。“あのさ、アベックって、、、”いや、やめておこう。そんなことが聞きたいんじゃない。きっと数日ぶりに会えてうれしいんだ。

正直、僕は今シアワセの向こう側にいる。図書館の彼女とコンサートの彼女、ギャップに完全にやられてしまった。ただしここは、ゴールではない。ストーリーが始まっただけだ!と思っていた。

“ところでケント、仕事はどうするんだ?!”

シャワーの後、抜群のタイミングで、、、父親とはこういうものだ。この後の展開はお決まりだ。俺みたいになるな。これからの時代は、今までの様にはいかない。暗いんだよ。その今までを僕は知らないし、これからの時代は誰にもわからないじゃないか。

“好きな子ができたら、デートにさそえ”

どうしたんだ?急にロマンス路線に変更された。

“愛と平和の時代はわかった。自分たちらしく生きるといい。ただ、それには少しばかり仕事も必要だ“

今、愛に生きる僕は妙に納得してしまった。反論の必要がなかった。愛と平和があまりに大きくて無限のテーマに感じていた。アベック以降に僕が見つけたのはきっとこれで、未来は明るくなった。そのうちね。が気にはなっていたが、こんなことになるなんて…

 

もうすぐ1年が経つ。ファーストアベックアニバーサリーだ。

どうやら、僕の思い過ごしらしい、あの”アベック”はなんだったのか、

結局僕はいつもの町で暮らしている。そのうちね。を待っている。

特別変わったことが無い街だけど、ほかにアンジーを待っている場所がないんだ。

あの時、一緒にいたかったけど、連れて帰ることも、二人で風になることもできなかった。

 

ある日のこと、

僕は街で人気のDROPという店で食事をしていた。

 

よう!ケント君 元気かい?

ああ、アルベルト。

相変わらず、浮かない顔してるな。今日は見せたいものがあるんだ。

ポリポリ…

スコッチとバーボン、それとレスポールの話はもういいよ。

スワップミートでインディアンの格好をした男にバイクを売ったことがあって、代金をすべてコインで払うと言い出して、今思えば迷惑なやつだ!って話さ。

ポリポリ…ポリポリ…

わかった聞くよ。それで見せたいものって?

アルベルトはポケットから袋を出して、ゴソゴソと手を入れると神妙な顔をして差し出した。ノースダコタ、オクラホマ、オレゴン、ニューハンプシャー、、、裏を見てごらん、クオーターコインだよ。ワシントンが見えるかい?

ああ、でもこっち側はイーグルじゃなくて…それにこれ1999とか2008とかこれは何?いまは1970年…ひょっとして偽物?

ははは、それもいいね。信じるかは君次第だ。さっきのバイクの代金の中に入っていたんだ。ポリポリ…ポリポリ…ポリポリ…

それで?

その男は昔、インディアンに会いに行ったそうだ。彼らの考えにとても感動して仲間に入りたくなり、長老と交渉の結果、希望の崖から未来の泉へ飛び込んだんだって。とても勇気が必要だったけどやってみたんだ。とても澄んだ泉はまるで空に浮かんでいるようだったそうだ。そして勇気の印だと言ってこのコインをもらったんだって。

長老は、未来から持ち帰った。と言っていたそうだ。

ポリポリ…  ポリポリ…   ポリポリ…

それにしてもいつもナッツを…

ポリポリ…  ポリポリ…   ポリポリ…

ねえ、アルベルト、このナッツ確かにおいしいけど食べすぎ….

 

 

“ああ、僕はこれしか食べない、たとえリスになったとしても”

 

 

…アルベルトはいつも難解な話を簡単に話してくれるけど、ホントかウソかよくわからない。おとぎ話を超えてファンタジーだ。

あの、アルベルトこれって騙されてるんじゃ、、

ああ、そうかもしれない。それは自分にとってどうなのかで決まるね。僕は何日も想像を膨らませてたのしかったし、こんな話を今君にしてる。もちろん何かのジョークかと思ったよ。でもさ、未来は続いてるってことだ。州ごとに柄が違ってる。ほら、ルーツの年号も入っているだろ?アイデンティティーは続くんだ。僕は満足だよ。

アルベルトはナッツを食べるのをやめて、こう続けた。

それでだ、浮かない顔のケント君、このコインを君にプレゼントしようと思うんだ。大丈夫、これが証拠だよ。きっと未来は続いてる。君は私よりずっと若い。不安な気持ちもわかるが、それだけ考えているということだ。考えるベクトルを変えるんだ。ポジティブに。さっきも言ったが、君は若い。明日またスワップミートがあるだろ。行ってみるといい、君のお待ちかねに会えるかもしれない。

ポリポリ… ポリポリ… ポリポリ…

ありがとう、アルベルト。またね。

ポリポリ… ポリポリ…

 

翌日、アルベルトに言われたようにスワップミートに向かった。特に探し物は無かったが、例のコインは持っていくことにした。

 

 

いらっしゃーい。ブランケットはいかがですかー?

 

 

ア、アンジー…だ!間違いない。僕は声が出なかった。芝生の上にブランケットを並べている彼女は朝日に照らされて、まさに僕の待っていたアンジーだ。でも彼女の隣にはまさかのインディアン。仲よく話をしている。一緒に店を出すようだ。どうしよう…とは言ってられない。

あの…

しばらくして、彼女が離れたすきにインディアンに話しかけてみた。

君は確か…ケント君。コインは持ってきたかい?

え??

僕だよウィリアム。図書館でサポートしたろ、ブランケット。

もしかしてスワップミートのインディアンって….

ああ、僕の事さ。コインを貸してごらん。

なんで僕がコインを、、、

説明は後だ、さ、貸して。

ウィリアムはコインを受け取ると、ハンマーで叩き始めた。

僕はインディアンに教わったんだ。こうするとコンチョができるんだ。実はリスのオジサンから話を聞いてね。君のお目当ては彼女だろ?1年も待ってたんだって?ニューヨークでアベック初体験も聞いたよ。そしたら、ついこの前アンジーが戻ってくるって僕に連絡があったんだ。ちょうどブランケットをスワップミートに持っていくって話したら、手伝わせてっていうからピンと来たんだ。

 

図書館のころから、二人はお似合いだった。

きっと、アンジーは君に会いたがってるよ。

 

リスのオジサンと僕で、おせっかいな作戦を立てたってわけさ。ほらもうすぐ戻ってくるよ、急がないと…できた!ほら!

ウィリアムはレザーを取り出すとブランケットにさっきのコンチョを縫いとめて、渡してくれた。

 

 

 

ケント君!

 

 

 

アンジェ…アンジー!

 

 

久しぶりね。わたし戻ってきたの。

そのうち…

そうね、そのうちが今になっちゃった。ごめん。

ねぇ、それなに?ブランケットに何かついてるよ?

ああ、インディアンとアルベルトが、勇気の印に…コインがコンチョで、ポンチョ…

なにこれ!すごくセンスいい!

 

ねぇ、ケント君。デートしよう。

 

 

つづく。

 


 


 

という訳で、アンジーとケントのアベックブランケット、シーズン2でした。ホリデーシーズンにピッタリのブランケットにナイスなストーリーが加わりました。デートブランケット誕生です!ご予約のお客様はもうすぐ完成です。楽しみにお待ちください。また、ほぼ予約分で埋まっていますが、3タイプとも少しだけ確保できそうです。数量が決まったらご案内しますので、どうぞよろしくお願いします。

ブランケット販売ページ(現在予約はできません)

 

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

それでは、また。

戸谷より