January 16. 2026 ANGIE AND KENT’S WOOL BLANKET Episode – 3
「ラッキーデイズ」
あの日から、
僕たちはよく歩いた。
目的なんて特になくて、
ただ同じ方向に足を出していただけだった。
港まで行ったり、
古い橋を渡ったり。
アンジーはいつも、
何かを見つけるのが早かった。
「ねえ、あの建物かわいくない?」
「この道、夕方になると光がきれいなの。」
僕はただ、
“隣にいる”ことが嬉しかった。
ある日、
アンジーが立ち止まって言った。
「ねえ、ケント君。」
「私たち、一緒にビジネスを始めない?」
「ブランケットを作って、販売するの。」
僕は少し驚いたけど、
アンジーの目はもう
“未来”を見ていた。
「だってさ、
あのブランケット。」
「私たちの始まりだったでしょ?」
図書館の中庭。
ピンクラインのブランケット。
“アベックしてよ”。
全部が、
まだちゃんとここにある気がした。
「名前どうしよっか?」
アンジーはノートを開いた。
しばらく考えて、
ペンをくるくる回してから言った。
ANGIE & KENT’S WOOL BLANKET
「どう?」
……きみが先なんだね。
「リーダーはアタシ。
君はスタッフ。」
僕は笑った。
「それに、こういうのはね、
“オンナ”が先の方がいいのよ。」
最初の1枚を作るのに、
思ったより時間がかかった。
色で迷って、
サイズで揉めて、
素材の話で夜が更けた。
「これは“やさしい色”じゃない。」
「いや、これは“強い色”だよ。」
結局、
どちらに決まっても、
“ふたりの色”になった。
でも、
問題はそこじゃなかった。
ブランケットステッチのミシンが、
どうしても上手くいかない。
何度調整しても、
糸は思ったところを走ってくれない。
「ケントくん、できた?」
「……いや、まだ。」
「発表は金曜日よ。
なんとかしなきゃ。」
「……。」
アンジーは、
少し考えてから言った。
「いいじ、いいじ、やっきねー。
いいじ、いいじ、やっきねー。」
「……?」
「いいじ、いいじ、やっきねー。
いいじ、いいじ、やっきねー。」
「……なにそれ?」
「おまじない。」
「前に図書館で読んだの。
“マスターボーズのラッキーデイズ”。」
「日本にはミシンの神様がいてね、
上手くいかないときは、
こうやって手を合わせて……」
アンジーは、
真剣な顔で手を合わせた。
「いいじ、いいじ、やっきねー。
いいじ、いいじ……」
……カタカタ。
ミシンの音が、
少しだけ変わった。
「治った!!!」
アンジーは、
ちょっと得意そうに笑った。
「ほらね。」
完成したブランケットを広げたとき、
アンジーは静かに言った。
「ねえ、ケント君。」
「これさ、
売れなくてもいいかもね。」
「え?」
「だって、
あたしマジめっちゃ似合う。」
夕暮れの公園で、
僕たちはブランケットに座った。
風が少し冷たくて、
アンジーは僕の肩に寄りかかった。
「ねえ。」
「なに?」
「僕たちって、
このまま続くのかな?」
アンジーは少しだけ考えてから、言った。
「そうね。
まだクラスメイトだけどね。」
「……え。」
というわけで、
アンジーとケントのブランケット。
エピソード1の
ピンクラインと同じ柄で、
リバイバルです。
アベックタイプ、ハーフタイプに、
当時にはなかったデートブランケットもご用意しました。
1月17日 午後9時
ウェブストアで販売スタートします。
ぜひお求めください。